私の名画②「ローマの休日」

前回「明日に向って撃て」で原題の話をしたのでその続きから入ろう。

いまだ根強い人気を誇る「ローマの休日」。お父さんお母さんもご覧になった方は多いだろうし、観ていなくとも題名は知ってるという人も多いのではないか。ストーリーは王道中の王道、いやこの「ローマの休日」によって王道ができたのかもしれない。

日々に疲れたアン王女がつかの間の冒険と恋をローマで楽しむ物語である。つまり、「ローマ『での』休日」だ。

さて、これをそのまま英訳すると、

Holiday in Rome.  となる。

ところが下の題名を見ていただきたい。

「ローマの休日」の原題は『Roman Holiday』なのである。直訳するなら「ローマ人の休日」「ローマ式の休日」となるだろうか。

だが、ヘップバーン演じるアン王女はイタリア人ではなく、物語もローマ人によるローマ人のためのローマ式過ごし方の紹介ではない。 この「Roman Holiday」というのは別の意味があって、それは古代ローマ人に由来する。そこが面白い。

劇中にも出てくるコロッセオ等で古代ローマ人は奴隷同士を戦わせ、それを見て楽しんだ。つまり、他人の不幸によって成り立つ娯楽、他の人を苦しめて喜ぶのが「Roman Holiday」のもう一つの意味、いや本当の意味なのである。

最近の映画でいえば「マイティー・ソー/バトル・ロイヤル」である。グランドマスターが支配する星でソーとハルクが闘い、それを観て民衆が熱狂する。少し前でいえば、ラッセル・クロウの「グラディエーター」がまさにそれだ。

あの素敵な恋物語である「ローマの休日」の原題は、実は悪趣味な意味の語だったのだ。では、なぜだろうか。

物語の前半は確かに「他人の不幸」だろう。アン王女の不自由な日々。きつい服や靴に締め付けられながらもそれを表に出すことはできない。まるで人形だ。延々と続く挨拶と握手。舞踏会では棺桶に片足つっこんだじいさん達とのダンス。口臭衛生の概念などない時代。地獄のような臭さだったに違いないw

映画を観るとき私達はどうしても出演する俳優に心をとらわれてしまうが、映画は監督のものであり脚本家の分身だ。作品は彼らそのものなのだ。また、時代背景も色濃く反映される。監督・製作はウィリアム・ワイラー。「嵐が丘」「ベン・ハー」などアカデミー監督賞受賞3回という記録を持つ大監督だ。

「ローマの休日」は1953年。 冷戦が始まり、アメリカは共産主義への恐怖からいわゆる「赤狩り」が世を席巻する。ジム・キャリー主演の「マジェスティック」にも描かれるがハリウッドはその標的となる。 ウィリアム・ワイラーは抵抗した一人だ。 そして「ハリウッド・テン」と呼ばれる脚本家がいた。

ダルトン・トランボである。「ローマの休日」の脚本は彼が書いた。がしかし、赤狩りのため表に出ることはできない。だから名前を借りた。古いクレジットでは脚本はイアン・マクレラン・ハンターとなっている。トランボについては「トランボ・ハリウッドに最も嫌われた男」という映画があり、ラストの演説は泣ける。

これらの時代背景などから彼らは皮肉をこめて「Roman Holiday」と名付けたのではないか。故淀川長治氏が「なんていやらしい原題か」とつぶやいた記憶もある。また、弾圧の日々の中、監督・脚本家のプライドとして、映画は娯楽、だから徹底的に楽しい映画を作るんだという気概もあったかもしれない。

劇中の一場面。アン王女は質問する記者に対し「人と人との信頼が永遠に続くことを願う」と答える。そもそもなぜローマか。アン王女の設定はヨーロッパのある国の王女。ならば、そのロマンスの場所はアメリカでも良かったのではあるまいか。

しかし、ラストで、あの最高のラストにおいて「最高の都市はどこ?」と聞かれたアン王女は「ローマ、ローマこそ最高」と声高らかに答える。そこにトランボや ウィリアム・ワイラー達の心の声があるのかもしれない。

グレゴリー・ペックとの別れを決意したアン王女の凛とした姿に涙する一方、製作者たちの叫びが聞こえた気がした。

それでもやっぱり「ローマの休日」。トチ狂ってRoman Holiday をもじって「浪漫ある休日」などとされなくてよかった。

これだけの名作&王道ストーリーだから同じような作品はたくさんある。日本では武田鉄矢主演の「ヨーロッパ特急」。実はこれは超絶に泣ける。はっきりいってモロパクリである。が、泣ける度は金八先生どころではない。DVD化はされていないのが至極残念であるが、観る機会があったらぜひお見逃しなく。

そこで、もし現代の日本でリメイクするならこんな配役で。まず、オードリー・ヘップバーンは広瀬すずさん。

グレゴリー・ペックはディーン・フジオカ氏。

雰囲気、似てると思いませんか。当然異論は噴出でしょう。

がしかし!! 美容師のマリオは誰が何と言おうと…

ムロツヨシ氏にお願いしたい。役柄もぴったり。

きっと素敵な物語になる。

次回予告――― 「銀河鉄道999」「さよなら銀河鉄道999」。といっても予定は未定であって決定ではない。

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投稿者: keishoseminar

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