魅惑の南欧ビーチ

オカマ襲撃事件の前々日、私はニースにいた。

ニースといえば、コート・ダジュールを代表する南ヨーロッパ最高のリゾート地である。

バックパッカーであるということは、どこへ行くにも上はTシャツ、下はジーパンであり、はっきりいって金もない。世界を代表する富豪が集まるニースからモナコにかけてのこれぞ地中海といった街並みやビーチを散策するには少々似つかわしくない。というか、だいぶ場違いだ。

では、なぜニースに向かったのかというと、それまで海といえば湘南というちょっと濁った海岸しか知らなった島国の一青年が、列車から見ても泳いでいる魚が見えるという青く透き通った海を満喫したいから・・・ではなく、言うまでもなくトップレス鑑賞のためである。

しかも、パツキンの美女。

小さな頃に「がいこくのうみって、みずぎをつけないでおよぐんだよ」と海外勤務の長い父が酔った勢いでポロっと漏らした。その頃は芸能人水泳大会がテレビを賑わしており、お楽しみはポロっとであった。きっと酔った父とそんな番組を見ながら交わした会話だったと記憶する。幼心になんてハレンチなところがあるのだろうと思ったが、 日々すくすくと健全な成長をとげていた少年だったので、翌日にはなんて素敵なパラダイスだろうかこの世の極楽に違いないと、もし大人になって海外へ行くことがあったら真っ先に訪れる場所にしようと心に強く決めていた。

本当のことを言えば、ワールドカップ観戦やF1の爆音をじかに感じたいなども隠れ蓑である。いかにして金髪美女と出会うか。これに尽きる。ついにこの日が訪れたのだと前日は鼻血がポロっと出た。

マルセイユからカンヌ、そしてニースへと向かう列車からの景色は絶景で、真っ白な砂浜と透き通った青い海、そこになぜだか真っ白な素肌と透き通った青い瞳とが重なり合い、ほぼ錯乱の一歩手前であった。素通りするヤツの気がしれない。

そして、青年はついに魅惑の地に降り立ったのである。

そこはまぎれもないリゾート地であった。まずは腹ごしらえとしてリゾートならではの最高級フレンチへと思ったが金がないので、中華に入った。中華は偉大である。ヨーロッパのどこの街へ行ってもある。しかも、安くて味もまず外さない。フランス語は読めないがメニューをみればなんとなく察しがつくのも良い。マルセイユのビストロではなんだかよくわからないので「ステーキ」と書いてあるっぽいものを指さしたら、あろうことか生肉のみじん切りの塊が出てきた記憶も新しいので、ここは安パイに落ち着いた。思えばあれはタルタルステーキだったのだと気づくはのちの事である。

ランチを終えて準備万端、いよいよ戦闘開始である。ビーチはすぐそこだ。ガン見しすぎて通報、その後異国の地で牢獄行きなど親不幸にもほどがあるので、一応サングラスは持ってきた。

ところが、である。

いない。真っ白な砂浜に真っ白な素肌の美女はわんさかいる。が、しかし肝心のトップレスの方々がいないのだ。なるほど、さすがにニースではなくもう少し離れたあまり人目のつかないところが穴場なのかとうろちょろと歩き回ったが、ターゲットは捕捉できない。

陽射しは突き刺すように降りそそぐ。ちょっと歩いただけで両腕は真っ赤に日焼けしていた。

まあこれも仕方ないよな、と腰を下ろした。しかしよくよく考えれば、私が好きなのは「隠しの美学」である。多くの男性読者の方々のグングンとうなづく姿が目に浮かぶが、実はモロより見えるか見えないかくらいが最も血圧が上がる。下着を盗むヤツの気は知れないが、それを着ている女性を見るのは実に高尚な精神の表れである。想像力こそ神が人間に与えたもうた最も高貴なものである。と同時にまた罪深い。

そう思えば、そこは楽園であった。ビキニ姿の麗しき金髪女性たちが右を向いても左を向いてもあちらこちらから目に飛び込んでくる。絶景であった。それもまた素晴らしいとどこまでも青く続く地中海の水平線を見つめようとしたその時、すぐ目の前を何かが通り過ぎた。

金髪の美女軍団ならぬ白髪の熟女軍団であった。いや、正確にはおばあちゃん達である。

あろうことかトップレスであった。

ついに見てしまった。見てはいけないものを見てしまった。確かにパツキンであったが、熟女も熟女、熟々女である。しかも集団である。正確にはおばあちゃんである。昔、母親に連れていったもらった銭湯での記憶が鮮やかによみがえる。そこにはいつもおばあちゃん達がいた。

なぜに彼女らは正々堂々を歩くのであろうか。今であれば、うんうん我もまたそう也とうなづくこともできよう。そして、それは老いを迎えつつある私の心の中で美しくも映えるであろう。ただ、当時の私は21歳の青年である。落胆はすさまじいものであった。ちょっと泣いた。涙がポロっと出た。別の意味で網膜に焼きついた。

仕方がないのでビールを飲んでそのまま砂浜で寝た。今後も目に飛び込んでくるのが熟女軍団であればトラウマ化する恐れもあるので、うつぶせになってすべてを忘れるように眠りについた。

絶好の海水浴日和である。明日はいよいよ開催国イタリアに入るのだと我を落ち着かせた。

どのくらい眠っただろうか―――。その後、夕方になって飛び起きたら、背中が妙に熱い。あまりにも熱すぎて触ると痛い。南フランスの直射日光を甘く見ていた。日焼けどころではない。はっきりいってヤケドである。シャツすら着られない。観光地なのでクッソ高いB&Bでシャワーを浴びて一人絶叫し、夜は痛くて眠れなかった。

天罰が下ったのである。夜は一人シクシクと泣いた。なぜだか、もうしません、ごめんなさいとつぶやいていた。熟女、いやおばあちゃんと地中海を甘くみた罰だ。熟女の呪いである。海より深く反省した。

それ以来、決して熟女から目を背けることなく、むしろその時の「反省」を活かし勤務時代は「熟女キラー」の名を欲しいままにしたのである。

人生は失敗の連続であり、思うようにはいかない。だが、それを活かすも殺すもまたその人次第なのである。

と、私がなぜにこのような体験を赤裸々に語ったのかというと決してウケを狙ったわけでも、てめぇで書いていてあまりにも面白いので調子に乗ってあることあることを書きつづった訳でも、決してない。この高貴なる理想が言いたいがために、教育者としてのプライドを投げ捨てあえて泥水をかぶったのだということをぜひご理解いただきたく、ここに筆を置く。

予告。超大便…失礼、超大作「脱糞について」近日公開予定――――。

https://sagamihara.keishoseminar.com/

投稿者: keishoseminar

中学受験・高校受験「慶翔ゼミナール」 相模原市中央区相模原2-12-21 JR相模原駅 南口から徒歩5分、住宅街にある学習塾です。 自宅1階を改装し、妻と2人で全塾生を指導します。 今年で開塾18年目となります。朝塾、やっています。

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