原価の話

小学生の算数で避けて通れないのが、割合だ。

その中でもツートップは売買損益と食塩水の濃度だろうか。教え方はそれぞれで、特に「くもわ」への賛否はいろいろと場を賑わすが、「くもわ」や「はじき(みはじ?)」だけで解ける問題なんぞ扱わないのでここでは割愛する。ちなみに私は割合の授業は大好きだ。燃える。

ものの値段の話をする際、そもそも売買損益という言葉が小学生にとっては難しい(なお、うちではこの単語は中学受験コース以外では使わない)。私達大人にとっては日常使う言葉でも、仕入れ値、原価、定価、売り値、利益、損失など、実は彼らにとっては一つ一つがとっつきにくい言葉でもある。

なお、中学受験コースに限り、その手の言葉はバンバン使う。算数に限らず、国語でもあまり安易な言い回しはしないようにしている。かえってわかりづらくなってしまったり長々しくなってしまったり、せっかくの言葉に触れる機会を逃してしまうのはもったいない。もちろん私の中では何通りも言い換えを持つようにはしている。が、何より本番では直球ど真ん中で来る。幼児扱いせず、言葉を彼らに落とすのではなく、彼らが言葉に近づく努力をするように意識している。

それでもやはり言葉が難しいと、そこで扉を閉じてしまうことがある。よって、まずは興味・関心を持ってもらうために様々な話をする。昔は打率3割で強打者なんていう話もしたが、今は野球を見る子自体が少ないので打率といっても「?」が浮かぶだけ。おじさんは少し悲しい。そこで、毎週欠かさず買っているロト6・ロト7の当選率の話にスライドするのだが、そうするともっと悲しくなるので途中でやめる。食いつきがいいのはやはり食べ物だろうか。

私の弟はイタ飯屋のオーナーシェフだった時期があり、私も一緒にホールに入って接客をしていた頃がある。その頃の裏話などは大人が聞いても面白いだろうが、ここで暴露するのはほんの少しはばかれる。といってもほんの少ししか感じていないので、いつか気が向いたら書きつづりたい。

一般に飲食店の原価率は30%を上限に、と言われる。ここで、彼らにじゃあガストは?、 マックは?(断じてマクドではない)などと計算させると、まあだいたいは盛り上がる。さらに追い打ちをかけるようにコーラなどの飲料水の話をすると、だからドリンクバーって成り立つんだね、などなかなかいい回答がでてきてそこから横道にそれまくる(こともある)。

そしてほぼ例外なく「もとはこんなに安いのに、ズルるいよねー」とか「詐欺じゃね」とか出てくる。むしろそれらの言葉を待っていたといってもいい。なお、これは子供達の純粋な気持ちなので頭ごなしに否定はしない。だが、ここから私の話はヒートアップするのだ。

実は、私がわかってもらいたいのは割合でも原価率でもない。

三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎は若かりし頃に投獄されたとき、同じ牢屋にいた100両を盗んだ罪で捕らえられたという罪人から「お腹いっぱいの人には二束三文のまんじゅうでも飢え死にしそうな者なら十文で買う。それが商売。10両で買ったものを必要な人に100両で売った。なんも悪いことはしておらん。」という言葉で商売の極意を悟ったという。

世の中には、原価原価原価とことあるごとに難癖をつける人がいる。商売をする側にとってはとても大切な感覚だが、客側はそれを店側に問う必要はない。嫌なら他の店にいけばいいだけだ。算数の計算も大切だが、そういういやらしい人になってほしくない。

よって、先ほどのような子供達の純粋な疑問や意見に対し、世の中のモノやサービスの値段というのはどういうものか、いろいろと例を挙げながら話をしていく。「では、今君たちが受けている、この塾の『授業料の原価』はいくらでしょう?」などは現時点で体験していることだし、ハッとしやすい例かもしれない。

そして、徐々に話は佳境になり「一万円札の原価はいくらだと思う?」という話になる。

すると、子供達はみな、ああそういえばお金っていっても紙だよね、となる。正確な数字は極秘だから我ら一般の人にはわかるはずもないのだが、発行量などから逆算する人もいて、1枚20円~30円程度ではないかと言われている。他にも1000円札や500円玉、さらには1円玉は1円以上の原価がかかっているらしいなどの話もまた面白い。

だがら、もし将来お店を開いて原価原価という人に出会ったら「わかりました。原価で提供いたしますので、一万円札の原価でお支払いください。売値は1000円ですが実は原価300円です。したがいまして、一万円札1枚30円として10枚ほどになります」と答えるように、貴重かつ実にためになる指導をしている。

なお、調子がいいとさらに話は発展し、お札の原料となるミツマタの話やお札のコピーが禁止されている理由、そして偽札作りはなぜ厳罰なのか、さらには偽札を扱った不朽の名作「カリオストロの城」、はたまた真保裕一氏の「奪取」など偽ガネ作りの肝は対人でなく対機械だ等を伝(文字数)

目に見えないものの価値を知り、それを高める努力をしてほしいと願う。

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投稿者: keishoseminar

中学受験・高校受験「慶翔ゼミナール」 相模原市中央区相模原2-12-21 JR相模原駅 南口から徒歩5分、住宅街にある学習塾です。 自宅1階を改装し、妻と2人で全塾生を指導します。 今年で開塾18年目となります。朝塾、やっています。

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